2015年5月6日水曜日

2ヵ月間の学習記録

ベトナム語学習を始めてから2ヶ月が経過したので、この間の学習内容を記します。

■テキスト(インプット)
・五味政信『ベトナム語レッスン初級』 (スリーエーネットワーク):完了
・田原洋樹『ベトナム語表現とことんトレーニング』(白水社):38課/50課
・三上直光『ニューエクスプレスベトナム語』(白水社):18課/20課

まず『レッスン初級』と『トレーニング』を並行して進めて、『レッスン初級』が終わってから『エクスプレス』を始めました。『レッスン初級』の内容がかなり濃密で、『エクスプレス』はやや易しく感じたので2課ずつ進めています。

『エクスプレス』が終わったら

・宇根祥夫『ベトナム語速読・速聴・速解』(三修社)

に手を付ける予定です。

■テキスト(アウトプット)
・五味政信『ベトナム語レッスン初級』 (スリーエーネットワーク):完了

Quiziletというフラッシュカードアプリを使っています。 1課ずつ単語パートとフレーズパートに分けて入力したら、移動時間などを利用してひたすら解くという手順です。このアプリのおかげで学習歴2ヶ月にしては語彙も文型もかなり定着したと思います。また、大量に単語やフレーズを入力したおかげで、ベトナム語のキーボード入力にも慣れました。

ちょうど今日、『レッスン初級』が 終了したので、明日からは

・三上直光『ニューエクスプレスベトナム語』(白水社)

を始めます。

■レッスン
拓殖大学公開講座の入門クラスに1回出席したのですが、この2ヶ月独学をした結果、授業の内容が物足りなく感じてしまったので、解約することにしました。ただ独学だけでは聴く力と話す力がつかないので、夏ころからマンツーマンレッスンに通う予定です。マンツーマンレッスンでは、自分の希望がとおるようなら

・清水政明『ベトナム語』(大阪大学出版会)

を使いたいと考えています。

まだベトナム語という山の1合目にも辿り着いていない入門段階ですが、地道な努力を継続して手ごたえを感じられるようになればなと。

2015年5月4日月曜日

変幻自在の人称代名詞

日本語の特徴の一つと言えば豊富な人称代名詞ですが、ベトナム語も負けていません。市販のテキストで紹介されている人称代名詞だけでも

tôi:1人称。男女問わず使える「わたくし」
ông:年輩の男性に対する2人称
:年輩の女性に対する2人称
anh:同年代の男性に対する2人称
chị:同年代の女性に対する2人称
em:年下の男女に対する2人称

と、これだけあります。 実際に使われている人称代名詞は他にもあって、

mìnhtôiよりも若干カジュアルな1人称。非常に親しい間柄では2人称としても使われる。
tớ:親しい間柄での砕けた1人称
cháu:年輩の人と会話する際の1人称
bạn:知り合いに対する2人称
cậu:親しい間柄での砕けた2人称
bác:年輩の男女に対する2人称

などなど枚挙にいとまがありません。 使い分けは「年輩」とか「同年代」と一応の区別があるように、年齢がメルクマールです。このためベトナム人は知り合ったら相手の年齢を探るのが常のようです。最初は探り探り"anh "と呼んで、年齢が判明して相手が年下なら"em"に切り替える、というように。

しかも、ベトナム語の1人称、2人称というのはあくまでも相対的な区別で、例えば、"anh"や"chị"は相手が年下であれば1人称にもなり得ます。したがって、

Anh yêu em.

このフレーズは、男性が発話者であれば、「僕は君を愛している」だし、女性が発話者であれば「あなたは私を愛している」になります。複雑です。

この人称代名詞の関係で、『ニューエクスプレスベトナム語』 というテキストで面白いことを発見しました。ベトナム語は年齢によって人称代名詞を使い分けるという特徴があるからか、このテキストでは登場人物に年齢を設定しています。主な登場人物である日本人留学生の「たけお」は22歳、大学事務職員の「マイ」は21歳という設定です。

2人は第1課で出会った当初は、 anhchịで呼び合っています。その後、第5課でたけおはマイを映画に誘い、第15課ではたけおがマイの自宅に電話をかけてお母さんと話したり、第17課では遂にたけおはマイの自宅に招待され、手料理を味わいます。ここまでは一貫してanhchịです。ところが、第18課でたけおがマイのことを"Mai"とファーストネームで呼んだり、"em"と親しい女性に対する2人称で呼んだりし始めたんです。これは自宅に招待された後になにかあったとしか思えません。テキストでは残念ながらその後のたけおとマイについてのスキットがないので、2人がどうなったか学習者は知る術がありません。

テキストのスキットまで興味深く読めてしまうベトナム語。面白い言語です。

2015年4月20日月曜日

名前をベトナム風に改名してみる

語学のテキストの第1課はたいてい自己紹介の場面です。中国語のテキストでは、日本人でも名前の漢字を中国語の発音にして名乗るのが普通です。例えば、田中太郎さんは"TiánZhong TàiLáng"というように。一方、ベトナム語のテキストでは日本人はそのままローマ字にするだけ。田中太郎さんは"Tanaka Taro"。なんとなくつまらないですよね。ベトナム人が自分の名前を聞いて、親しみが湧くような名乗り方はないものでしょうか。

ベトナム人の名前は、

■姓 Họ
■間の名 Tên đệm
■称する名 Tên chính

の3つの部分に分けられます。ベトナムの現在の首相であるグエン・タン・ズン首相の名前を例に挙げると、姓がNguyễn、間の名がTấn、称する名がDũngになり、ベトナム人は一般的に称する名でお互いを呼び合うため、グエン首相ではなく、ズン首相と呼ぶのが普通です。

 さらに、ベトナムは中国の影響を色濃く受けていて、ベトナム語にも漢字由来の言葉「漢越語 từ Hán Việt」が少なくないことは以前も述べたことがありますが、名前もやはり漢字で書き表すことができます。グエン・タン・ズン首相は、「阮晋勇」となります。

■姓: Nguyễn=阮
■間の名: Tấn=晋
■称する名: Dũng=勇

ということは、日本人の名前も漢字をベトナム語の発音にすれば、ベトナム風に改名できるのではないか。調べてみると、同じような発想で日本人の名前をベトナム風にしたり、ベトナム人の名前を日本風にするという試みをしている人がやはりいました(笑)。

具体的にどうするかというと、漢越辞典で自分の名前の漢字を一文字ずつ調べて、対応する発音を並べればいいというわけです。自分の名前は、"Cát Ngạn"になりました。

ただ、こうして一文字ずつベトナム語の発音を並べても、もしかしたらベトナム人にとっては意味不明かもしれないので、とりあえずローマ字読みで発音して、それぞれの漢字のベトナム語の意味を伝えるという方法もありでしょうか。漢字を媒介にして名前の意味を伝えられるのは、漢字文化圏ならではですよね。

2015年4月12日日曜日

どの言語にも存在する省略語

明日の夜はベトナム居酒屋で飲み会の予定があって、数日前からとても楽しみにしています。フォーやバインセオを肴にしつつ、333ビールをごくごくと飲み干す…たまりません。

せっかくベトナム居酒屋に行くのだから乾杯もベトナム語でしてみようというわけで、ベトナム語で乾杯の掛け声はなんと言うのか調べてみたところ、

một hai ba dzô!

と言うらしいことが分かりました。một, hai, baは1,2,3なのですぐに意味が分かったものの、dzôはどの辞書を調べても見つかりません。新語の類なのかもしれないと調べるのを諦めようとした時、遂に手がかりを発見しました。

こちらの記事によると、メールやチャットでは簡略化、文字の置き換えがされる語句が少なくないそうなのです。例えば、không→khôg(nの省略)、 thích→thík(chがkに置き換え)というように。 dzôも置き換えの一例で、vô(「入れる」)という語のvをdzに置き換えたものになります。

これでベトナム語の乾杯!は「1,2,3 入れろ!」という意味だということが分かりました。

でも、vとdzでは発音が随分と違うのに何故置き換えるのだろうかと腑に落ちません。実はこれには方言が関係しているようです。ベトナム語はハノイを中心とする北部方言と、ホーチミン市を中心とする南部方言で発音や語彙が異なるのですが、ホーチミン市の西部に位置するカーマウ省やティエンザン省では、vを「ヤ」行に近い「ジャ」行で発音するそうです(参考1)。南部方言ではdを「ヤ」行で発音する(北部方言では「ザ」行)ので、vがdzに置き換えられるようになったのではないか、と推測しました。

これで dzôの謎は一応解けたのですが、メールなどで簡略化、文字の置き換えがされるということが判明して、ベトナム語習得への道の険しさを痛感しました。しかも、北部と南部では乾杯の言い方も違って、北部ではCạn lyと言うそうで(参考2)、一筋縄ではいかないベトナム語の奥深さもまた面白さなのかもしれません。

2015年4月11日土曜日

月曜日は1番目? 2番目?

今はまだ拓殖大学の公開講座もマンツーマンレッスンも始まっていないので、自習を続けています。自習は、五味政信『ベトナム語レッスン初級』(スリーエーネットワーク)の文法解説を読んで練習問題を解いた上で、その単語とフレーズをQuizletに入力して頭に叩き込む、という方法を採っています。

今週は仕事に余裕があったのでベトナム語学習がかなり捗って、レッスンごとの学習のほか、会話をするうえで欠かせない、数字、時間、曜日、季節に関する語句もQuizletを使って覚えることができました。その中でどうしても混乱してしまうのが曜日。中国語と微妙にズレがあるからです。

中国語では

日曜日:星期日/禮拜天/週日
月曜日:星期一/禮拜一/週一
火曜日:星期二/禮拜二/週二
水曜日:星期三/禮拜三/週三
木曜日:星期四/禮拜四/週四
金曜日:星期五/禮拜五/週五
土曜日:星期六/禮拜六/週六

というように、日曜日を除いて、月曜日を「一」として、以下二、三…と順番に続きます。

一方、ベトナム語は

日曜日:chủ nhật
月曜日:thứ hai
火曜日:thứ ba
水曜日:thứ tư
木曜日:thứ năm
金曜日:thứ sáu
土曜日:thứ bảy

月曜日は「2番目」という意味で、以下、「3番目」「4番目」…と続きます(日曜日は「主日」という意味です。)。つまり、中国語とベトナム語は1つずつ曜日の数え方がズレていて、これが混乱する原因でした。

違いは違いとして受け入れるとして、なぜこの違いがあるのか気になったので調べてみたのですが、違いがある理由の説明は今のところ見つかっていません。こちらのページでは、スワヒリ語では土曜日が「1番目」になっているというコメントもあり、他の言語ではどうなっているのか興味が湧きました。

月曜日が中国語ではなぜ「一」で、ベトナム語ではなぜ「二」になるのか。この謎を解いていただける方、いらっしゃいませんか。

2015年4月6日月曜日

インターネットは語学教材の宝庫

中国語や韓国語は市販のテキストが充実していて、どのテキストを使えばいいのか迷うほどですが、ベトナム語のようなマイナー言語は選択の余地がないくらい種類が少ないのではないかと思っていました。が、書店の語学教材コーナーで探すと、ベトナム語、タイ語、マレー語などの東南アジア諸言語のテキストは意外に多くて驚きました(台湾語のテキストは少なくて悲しくなります。)。

先日のポストでは使用している市販テキストを紹介しましたが、今日はベトナム語のオンライン教材をいくつか紹介したいと思います。

 ■ベトナム語表現集
 ベトナム在住のにしみつぐさんのブログ『ベトナムから世界へ!目指せPolyglot!多言語話者への終わりなき道』で紹介された生の口語集です。オンライン教材というわけではありませんが、簡単なアンケートに回答すれば、メールでPDFファイルの表現集を送付してもらえます。流行語やくだけた表現など現地で使われているベトナム語を知ることのできる格好の教材です。まだ話せるようになるレベルではありませんが…。

東京外国語大学言語モジュール
 超有名なオンライン言語学習教材の極み。ベトナム語をはじめ27言語の会話や単語を学習することができます。

Quizlet
 オンライン教材というか、フラッシュカードアプリです。市販のテキストの内容を単語とフレーズに分けて入力して、自宅ではPCで、外出先や移動の電車内ではiOSアプリで学習しています。隙間時間を有効活用できるので重宝しています。

大阪大学ベトナム語初級テキスト
 そして、今日、ネット検索をしていて偶然発見したこちら。その内容の豊富さに驚きました。発音練習教材、基本単語集から会話テキスト(音声あり)まですべて無料で公開されているんです。大阪大学のオンライン教材としてはベトナム語独習コンテンツもあるのですが、初級段階で必要とされるであろう内容が網羅されているこの初級テキストが素晴らしくて、どちらが優れているのかは比較するまでもありません。

他にもオンライン教材があれば是非教えてください。

2015年4月5日日曜日

ベトナム語と中国語の共通点

ベトナム語を1ヶ月学習して感じたのは中国語との共通点が多いということ。だから、中国語学習者にとってベトナム語は学習しやすい言語だと思います。僕がベトナム語にハマりつつあるのも、その学習のしやすさが理由の一つです。韓国語は日本語と似ているので日本人には学習しやすいと言われますが、僕にとっては母語である日本語との微妙な違いばかり気になって、どうしても馴染めませんでした。その点、ベトナム語と中国語はともに外国語なので、中国語学習で身につけた外国語学習法を適用できて、たぶん韓国語よりはスムーズに勉強できそうです。

僕の発見したベトナム語と中国語の共通点は以下のようなものです。

音韻
声調があること。中国語には4種類の声調があって、音の高低によって意味の区別をしています。ベトナム語も同様に声調があって、こちらは6種類あります。中国語よりも種類が多いので覚えるのは大変のように思えますが、昨年から学習を始めた台湾語には声調が5種類(入声2種類を加えると実に7種類)あって、既に声調の種類の多さには免疫ができていたので、ベトナム語の声調を覚えるのはそれほど難しくありませんでした。

ちなみに、こちらがベトナム語の声調です(Wikipediaより)

文法
基本的な文法構造はかなり似ています。SVO型(主語-動詞-目的語)であること、孤立語であること、動詞の後に方向や結果を表す補語を置くことがあること。

孤立語というのは接辞や語形変化がなく、語順によって意味が区別される言語です。例えば、中国語では「我愛你」「你愛我」でまったく逆の意味になります。ベトナム語でも同様に「Anh yêu em.」「 Em yêu anh.」で逆の意味になります。

これらの文法的な共通点があるので、中国語学習者にとってベトナム語は学習しやすい言語と言えます。韓国語のように語尾変化を覚える必要はなく、基本的な構造を覚えれば、あとは語彙を増やしていくことで表現の幅を広げることができます。また、中国語の方向補語や結果補語の考え方をそのまま適用できます。

語彙
歴史的理由により、漢字由来の言葉「漢越語 từ Hán Việt」が少なくありません。これは韓国語も同様です。ベトナム語の表記はアルファベットを使用していますが、漢越語の場合は併せて漢字も覚えると、語彙が広がります。